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蒸気圧

大気圧と沸点

大気中のほとんどは空気と水です。大気圧は、天気予報でおなじみのヘクトパスカル(hPa)で表現されます。実はその大気圧とは、空気圧と水蒸気圧の和なのです。 「なぜ洗濯ものが乾くのか」のところで、水分子が存在しうる数には限りがある。とし、その限り以上になると露となってしまうと述べました。 これは、空気が存在しているという条件付きです。

鍋のお湯が沸騰するまでの状態を観察しましょう。鍋のすぐ上は、初めは湯気が上がり段々と水蒸気が多くなります。鍋のすぐ上の空気量が段々と少なくなっているのです。そして沸騰したときにはすべての空気がなくなりすべて水蒸気となります。 この日の大気圧が1,013hPaであったとします。鍋のすぐ上の水蒸気圧は、空気がなくなっていますから水蒸気だけで大気圧となり1,013hPaとなっています。そして、そのとき、鍋の温度は100となります。

温度と蒸気圧

富士山の頂上で沸騰

水が100で沸騰したとき、そのときの水の蒸気圧は1,013hPaです。

今度は、富士山の頂上で同じように鍋(やかんでも同じ)で湯を沸かしてみましょう。 富士山の頂上では大気圧はおよそ630hPaといわれています。先ほどと同じように鍋のお湯が沸騰したとき、鍋のすぐ上では水蒸気がすべての空気を追いやっているので水の蒸気圧は大気圧と同じ630hPaです。そしてこのときおそらく沸騰しているお湯の温度は87となっていることでしょう。

エベレストの山頂で沸騰

もう1点、エベレストの山頂に行きましょう。
ここでは大気圧はおよそ300hPa、沸騰したお湯の温度は69。ここで作ったインスタントラーメンの味はどんなんでしょうか。興味深いですね。 このように沸騰温度は圧力によって定まる。つまり物性値なのです。言い換えれば、蒸気圧は温度によって決まる。逆もいえます、温度を指定すれば蒸気圧が決まる。 ちょっと専門的になりますが、蒸気圧は状態数です。状態が決まれば決まる物性値のことを状態数といいます。

湿度と分圧

大気は空気と水の混合物です。その混合の割合が湿度です。沸騰した鍋のすぐ上には空気はなく水蒸気100%です。したがって、その水蒸気の圧力は大気圧に等しくなっています。 また、冬の朝、露結するときもこれ以上の水分は空気中に存在できず水滴となります。この湿度も100%です。別の表現では、飽和湿度といいます。

露結する、とはどのような現象が起きているのでしょうか。
ほとんどの液体は、温度によって定まる蒸気圧を有します。30の水の蒸気圧(飽和蒸気圧)は、42hPa。もし地球上の大気が42hPaであったとすると水は30で沸騰することになります。ところが、地上の大気圧は平均(高気圧でもなく低気圧でもない)で1,013hPaとされています。 鍋の中の水が30であったとすると、その水面すぐ上の水蒸気は42hPa、空気は1,01342=971(hPa)となっていることになります。幾つかの成分(空気と水とか)が混ざっているとき、その全体の圧力を全圧といい、それぞれの成分(空気、水)が占める圧力を分圧といいます。
そしてこれは、

全圧は分圧の和に等しい
 (ドルトンの分圧の法則)

です。

鍋の水面のすぐ上の相対湿度(気象庁でいう湿度)は100%です。この単位をRH%と表しましょう。 今、部屋の温度が30で湿度が60RH%とします、不快感を感じ始める湿度でしょうか。この60RH%とは、100RH%で水蒸気分圧が42hPa、この6割分、42×0.6=25.2(hPa) が水蒸気分圧となっている状態です。

そして、部屋の温度が21まで下がれば、露結します。 21の水蒸気の飽和蒸気圧は、25hPaです。 21の部屋では、水蒸気分圧は25hPaまでしか水蒸気を含むことができないのです。また、このときの水蒸気分圧比率は25.2/1,013×100=2.5% 空気の分圧比率は97.5%です。この分圧比率はそれぞれ大気中の全分子数に対する水分子の数量比率、空気分子の数量比率となります。この数量比率単位に関しては次項で詳しく述べます。