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蒸留で使用する濃度の単位

蒸留では、分子単位でその状態を観察したほうがより具体的に理解が進みます。前記「温度と分圧」の項で分子数の比率は簡単に算出されました。分子数の比で表す濃度単位はモル分率となります。

アボガドロ定数 ( N A ) ってのがありましたよね。どのような物質でも分子の数が 6.022 × 10 23 個で 1 モル。そしてその質量が分子量。1モルの気体の体積は 0 1 atm (標準状態という)で 22.4 L というような性質があります。

湿度をモル分率 ( mol-fr ) で表すと、

湿度( mol-fr  (水の分圧) / (全圧)   (水の分子数) / (大気の分子数)

上記(1)式を証明するには、もう少し知識を貯めこまなければなりません。ここでは、分子数の比率がモル分率 ( mol-fr ) となり、気体では圧力の比率に等しい。程度にしておきましょう。

この単位を質量単位へ変換するにはちょっと面倒な作業となります。
モル分率に関してもう少し具体的に見てみましょう。

今、段ボール箱の中にミカンが 1 個とリンゴが 9 個入っています。ミカンの割合は?

即座に 10 ( % ) って答えますよね。このように個数単位の濃度がモル分率 ( mol-fr ) の考え方です。個数単位で考えても何の違和感もない。 むしろわかりやすい。

では、 1 個の質量は、ミカン 30 g 、リンゴ 100 g です。その質量割合は? 

って問われたら、ちょっと戸惑いながら、 ( 30 × 1 )  /  ( 30 × 1 + 100 × 9 )  ×  100 = 3.2 ( % ) と計算するでしょう。そして、多分多くの人が何の意味があるの? 出題者の意図を聞きたいよ、ミキサーにかけてジュースとしたらミカン果汁率 3.2 % これなら出題の意図がわかりますが。

このように、気体、液体、個体およびその混合物の性状や動きをイメージしようとする際には、質量分率 ( wt% ) は何の意味ももたないのです。で、モル濃度(分子数の比率) ( mol% ) となるのです。

そうはいっても、初めにジュースを目にして、このジュースはミカン何個とリンゴ何個からできてるかなあ? って考えもしないですよね。でも、そう考えることが単位変換です。

「質量濃度 ( wt% ) =  (注目成分の質量)  /  (全体の質量)  ×   100  から 「モル濃度 ( mol% ) =  (注目成分のモル数)  /  (全体のモル数) ×   100  への変換

この変換をしてみます。
成分 1 x w 1 ( wt% ) 、その分子量が m 1 とします。全量を 100 g とすると。
100 g 中の、

成分 1 のモル数は、 x w 1 m 1    同様に成分 2 のモル数は、 x w 2 m 2

成分 1 のモル濃度 ( mol% ) = x w 1 m 1 x w 1 m 1 + x w 2 m 2 × 100

成分 2 のモル濃度 ( mol% ) = x w 2 m 2 x w 1 m 1 + x w 2 m 2 × 100

先ほどのジュースに代入してみます。 個数 ( % ) = 3.2 30 3.2 30 + 96.8 100 = 10 ( % ) となります。

「モル濃度 ( mol% ) 」から 「質量濃度 ( wt% ) への変換

この変換をしてみます。
成分 1 が  x m 1 ( mol% ) 、その分子量が m 1 とします。全量を 100 モルとすると、
100 モル中の、

成分 1 の質量は、 x m 1 × m 1    成分 2 の質量は、 x m 2 × m 2

成分 1 の質量濃度 ( wt% ) = x m 1 × m 1 x m 1 × m 1 + x m 2 × m 2

成分 2 の質量濃度 ( wt% ) = x m 2 × m 2 x m 1 × m 1 + x m 2 × m 2

ついでに

(平均分子量)   (全体の質量)  /  (全体のモル数)

(6)式の平均分子量、つまり、平均した 1 モルの分子の質量(平均した 1 個の質量) も時に便利な考え方となります。